馬主になる上で、どれくらい費用がかかるのか、また、どの程度の収入が見込めるのかは気になる部分ではないでしょうか。
競馬を楽しむユーザーには、当選馬券を換金して得られる収入や、馬券を買うためにかかる費用があります。
一方で、馬主にも愛馬をレースに出して得る賞金や、馬そのものにかかる費用が存在します。
しかしながら、これら二つは金額の動く規模感や性質が大きく異なるものです。
今回紹介するトピックでは、「馬主は儲かるのか」という根本的な疑問に切り込みます。
馬主の特権である賞金分配にはどのようなものがあるのか。
馬一頭につきどれくらいの収入が見込めるのか。
さらに、馬主として負担しなければならない費用にはどのようなものがあるのかなど、馬主にとって大切な「お財布事情」を分かりやすく紐解いていきましょう。
馬主の収入には大きく分けて3種類ある
馬主は特権として、愛馬が獲得したレース賞金の配分が受けられます。
競走馬のオーナーである馬主は、自らの出資馬がレースで獲得した賞金の8割を取り分とする権利を有しています。
馬主の主たる収入源である賞金は、大きく分けて3種類あります。
本賞とは?
出走馬のうち、1着馬から5着馬に対して交付される賞金を「本賞」といいます。
いわゆる“レース賞金”と言い換えてもいいでしょう。
金額はクラス・レースごとに異なります。
たとえば、由緒ある重賞レースであれば、その金額は億以上も下りません。
日本の名だたる重賞には、ジャパンカップの3億円や、日本ダービーの2億円、宝塚記念の1億5,000万円など、世界的に見てもトップクラスの賞金レートが設定されています。
分配率は、第1着から第5着まで順に、賞金額の100%、40%、25%、15%、10%と決まっています。
愛馬が何着に入るかが重要なポイントです。
特に第1着は掲げられている賞金を全額獲得できることから、レースのトップを勝ち取ることは、騎手や競走馬だけでなく馬主にとっても重要なのだということが分かります。
出走奨励金とは?
6~8着馬(重賞なら6~10着馬)には「出走奨励金」が支払われます。
これは、本賞の順位に食い込むことができなくても獲得できる賞金です。比率は1位の賞金額の2~8%ほどで、1位に対して一定の時間差をつけられてしまった場合は交付の対象にはなりません。
たとえば、平地の競走(新馬・未勝利競走を除く)においては、距離と芝・ダートの違いにより3~6秒の差が出てしまったとき、この出走奨励金は交付されません。
出走奨励金は、レースに出たら必ず交付されるものではありません。
あくまで「あと一歩及ばなかった」という惜しいレース結果を出した競走馬に対して支払われる賞金です。
特別出走手当とは?
「特別出走手当」は、前述した2つとは異なるもので、着順に関わらずレースに出走した馬にはもれなく支払われます。
金額はレースごとに決められています。
重賞競走なら432,000円、特別競走なら423,000円、さらに一般競争で1勝以上同士の競争であれば421,000円、新馬・未勝利競争ならば411,000円など、馬主は一定の手当が獲得できます。
一方で、これらの金額は条件により加算・減額する可能性があります。
たとえば、3歳または4歳以上の競走馬が芝1,800m以上の平地競争に出場した際には、金額に5万円を加算して交付されます。
逆に、1位とのタイム差が一定を越えた場合や、3歳秋季以降の平地で未勝利馬である場合は、額面の半額のみの支給となります。
また、4歳以降の未勝利馬に対しては支給自体されないなど、細かいルールが設定されています。
その他、特定の競走にかかる賞金もある
上記3つの主な収入に加え、競走馬の条件や特定のレースでのみ適用される賞金もあります。
たとえば「距離別出走奨励賞」は、3歳または4歳以上委の芝1,800m以上のレースを走った場合、1~10着馬に対し支給される賞金です。
他にも平地競争で5着までに入った内国産馬に与えられる「内国産馬所有奨励賞」、同じく平地かつ新馬・未勝利競争で5着までに入った“牝馬”に与えられる「内国産牝馬奨励賞」、さらに重賞レースをはじめとした特別競走でのみ3着馬まで交付される「付加賞」など、複数の賞金体系が準備されています。
競走馬1頭あたりの平均収入は?
平成29年のデータによれば、JRA(中央競馬)における登録馬主の平均収入は、愛馬1頭あたり約723万円と示されています。
参考JRA公式ホームページ調べ
ただし、実際に馬主になった際に支払われる金額はレースの結果によって大きく左右されるため、参考程度にとどめておくのがよいでしょう。
馬1頭にかかる支出額は?
馬主にとって注目すべき点は、収入だけではありません。
あらかじめ、かかる支出についても考えておく必要があります。
馬主活動に伴う支出は、大きく分けて「馬そのものを買うときにかかる費用」と「馬の飼養管理にかかる費用」の2つに大別されます。
1歳のサラブレッドの平均価格は?
JRAから公表されている「平成29年度サラブレッド1歳市場成績」(サラブレッドの約30%が取引されるセリのデータ)によれば、1歳のサラブレッド1頭を購入するためにかかる費用は、1頭当たり平均1,043万円と算出されています。
最高価格が2億9,160万円であるため平均価格が上がっている可能性はあるものの、最低額と最高額のちょうど真ん中となる「中間価格」でも453万円と、多くの方にとって気軽に払える金額とは言い難いかもしれません。
1頭の愛馬を個人馬主として所有する場合には、まず初期費用としてこれだけの金額がかかるという点を覚えておきましょう。
馬を育てるために預託料がかかる
愛馬をプロの調教師に預ける際の飼料代、飼育・調教費用等にあたるのが、この「預託料」です。
JRAでは、1頭につき1ヵ月60~70万円の費用がかかります。
愛馬が急な病気にかかった際や、レースで怪我をしてしまった場合の治療代なども、もちろん馬主が負担しなければなりません。
馬主活動は長期的になることを考え、あらかじめ費用は余裕をもって用意しておく必要があります。
まとめ
日本の競馬は、賞金2,900万円以上の重賞レースだけでも年に139回以上が開催されています。
また、もし愛馬がレースで1位になれなくても、ある程度の収入は保証されています。
そのため、馬主にとっては夢を追いやすい環境であるといえるでしょう。
一方で、最初に愛馬を選ぶのにかかる費用と毎月支払う預託料、さらに頭一つ抜けた収入を実現するためにはレースに勝ち続ける必要があります。
こうした条件を踏まえると、馬主は必ずしも「稼げる」とは言い切れないのが実情です。
個人馬主以外に、「一口馬主」「組合馬主」のように多数で出資金を分け合う体制もあります。
また、預託量が比較的安く済む地方競馬へ挑むという選択肢もあるでしょう。
“長い目で愛馬を支え応援していく”という、馬主として一番の喜びを忘れない範囲で楽しむことが大切です。