いつか白馬の王子様が現れると信じて待ち続けること30年余り。
王族が生息していそうなパーティー、会合、舞踏会はおろか、地元の同窓会さえろくすっぽ出席せずに三十路を迎えた私のもとに、まさか白馬の蹄音が聴こえてくるはずもありません。
しかし、今となっては全て些細なこと。
憧れだった白馬の足音。待っていても聴こえてこないなら、こちらから聴きに行けばいいのです。
これは競馬のケの字も知らなかった私が、白馬(葦毛)の馬主になるまでの実録ドキュメントです。
競馬初心者と名乗るのもおこがましい無知っぷり
初めまして。宮下たまきです。
普段はOLとして会社勤めをしながら、合間を縫って文章を書いたりしています。
好きなものはお洒落なカフェとLINEスタンプの某キャラクター。スポーツは大の苦手で、お酒とタバコはどちらもしません。休日はだいたい文章を書いているか、おいしいものを食べに行ってます。
この間は友達に連れられて、2.5次元の舞台を観に行きました。頑張る女の子が好きな方、「少女歌劇レヴュースタァライト」、おススメです。おかげさまでまんまと沼です。
こんな暮らしですから、自然とこれまで競馬とは縁遠い毎日を過ごしてきました。かろうじて知っていたのは小さい頃に見たマキバオーの主題歌くらいです。
あとは最近、JRAってところがテレビコマーシャルを流しているなあ……というくらいでしょうか。
「牡馬と牝馬、ボバとヒンバって読むのか」
……なんて素直にフムフムと感心していた視聴層、それが私です。
こんな初心者丸出しだった私が、めくるめく競走馬の世界に興味を持つようになったきっかけは、とある人からのお誘いでした。
府中で混まない食フェスがあるらしい
既知の友から甘い言葉を掛けられた私は、ふたつ返事で府中本町駅へと向かいました。
普段からフェスと名のつくものには(あまりにもパリピ仕様なものでない限り)積極的に向かっていたため、断る理由のない誘いでした。ただ、だいたいは代々木公園やら新宿公園あたりで開かれている食フェスが、また府中なんて随分と珍しいところでやるんだなあ、くらいのことは考えていた気がします。
気がつけば、私は東京競馬場に立っていました。
朝9時の開門とともに。
新規勧誘のプロなのではないか
今こうして思い返しても鮮やかな手口でした。お見事としか言いようがありません。
「土曜に府中の東京競馬場へ行かないか」
「土曜に府中の混まない食フェスへ行かないか」
相手の興味を惹く誘い文句をフックとした勧誘は、明らかにプロの犯行です。
もしも
「そもそも行く前にgoogleで調べれば概要くらい出てくるだろう」とか、
「休日の予定を相手任せにしているから予想外の出来事が起こる」といったご指摘がされるのならば、まさにその通りです。Exactry。ぐうの音も出ません。
私は言われるがまま指定された場所へ赴き、それがたまたま東京競馬場だっただけのことです。友とのやりとりの間にはなんら嘘偽りはありません。
補足実際、食フェスもありました。
しかし今回は、私のこうした「どうせ調べないだろうコイツ」といった部分まで見越しての勧誘であったと感じるので、どちらにせよ勧誘のプロであることに違いはないでしょう。
競馬に対する偏見はなかった
ひょんなことから競馬場の地を踏むことになった私ですが、特にこれといった偏見はありませんでした。
そもそも、これまでの人生において、私の周りには賭け事やギャンブルをたしなむ人はほとんどいませんでした。そのため、「競馬」や「競馬場」というものに対して、偏見を持つほどの知識や判断材料を持ち合わせていなかったのです。だからこそ、このような形での参加はまったく予想外でしたが、初めて来る場所への物珍しさばかりを感じていました。
ただ、初めての東京競馬場は予想以上にキレイでスマートな印象を受けました。どことなくコロッセウム風な内装も気品があって好きかも。
えっ。サラブレッド、触っていいんですか!
さて、開門とともに入った競馬場ですが、なにやら前方に人だかりができているのが見えます。よくよく見ると大人だけでなく、小さなお子さん等ご家族連れの姿も。
えっ。触っていいの!
馬に触るだなんて、いつぞや子どもの時分にマザー牧場か何かへ行ったとき以来です。
ペットこそ飼っていないものの、元々生き物は好きなほう。動物園ならふれあいコーナーに入り浸るほうの人間です。触らせてもらえるイベントがあるなら、ぜひとも撫でさせてもらおうではありませんか。
か、かわいい……!!!
理知的な瞳に長いまつげ、優しい息づかい。
そして、毛並みから伝わる温かな生き物の熱。
この瞬間、私は完璧に落ちてしまったのです。サラブレッド沼に。
まとめ:葦毛の馬にノックアウトされてしまった
お利口な葦毛の誘導馬にキュンときてしまったド素人OL。
次回は、初心者の目線から見た『初めての東京競馬場』をレポートします。